古美術商と私 津軽三味線はありますか?

津軽三味線は高い。
主婦の小遣いではなかなか気軽に買えるお値段ではないので、中古で手頃な三味線を探そうと、日々ヤフオクを眺めていた私。
毎日眺めているうちに「ヤフオクで筋の良い三味線を落札するのは私には無理」と分かりました。

そのあたりについては以下の記事でご紹介しています。併せてご覧ください。

ヤフオクで津軽三味線を探すのをあきらめた話
中古で掘り出し物の三味線を探そうと、毎日私はヤフオクやメルカリを覗いてみました。しかしネット画像を通した三味線の良し悪しは素人にはまずわからないものである。

そうこうしてヤフオクを眺めているうちに、三味線を出品する業者さんは古美術商が多いことに気が付きました。

古美術商といっても価値の高い骨とう品だけでなく、いわゆる古道具なんかも扱うんですよね。
また、大きな家の遺産整理などや古民家解体・蔵の解体の際に出てきた古い道具なんかをまとめて引き取ってくる業者も「古美術商」に含まれます。

では古美術屋に行けば中古の手ごろな三味線が置いてあるんじゃないかと思い、市内で唯一の古美術屋に行ってみた私です。




古美術商と私

その古美術屋は店舗自体は構えていますが、電気はいつも消えていて店が開いているのか閉まっているのかわからない。
まるで商売っ気が感じられない店舗なんですね。

ある日、用事で近くまで来た時に、ちょうど店舗の中に店主らしき人が入っていくのが見えて、あわてて追いかけました。
鍵を掛けられてしまったら、店に入れてもらえないので。

四門、行きま~す!

引き戸をガラガラと開けて「お忙しいところ突然すいません、お尋ねしたいんですが」と店主らしきオヤジを呼び止めます。
店の中には皿や壺、飾り棚や装飾品、値打ちモノからガラクタまでが所狭しと積み上げられていました。

奥に入っていたオヤジが驚いたように「はい?」と出てきました。

(/ω\)うわ、やばいかも。←心の声
出てきたオヤジは、恰幅の良い、どう見てもカタギに見えないひげ面・ハゲのこわもてオヤジです。

でももう、後には引けないわよね
呼び止めちゃったし (´;ω;`)ガタブルっすよ

「あの、突然お邪魔してすいません。中古で手頃な三味線を探していて、こちらでは三味線を扱っていますか。」私はできるだけ丁寧に尋ねました。

三味線くださいな

店主は私をじっと見て、「あるよ、ちょっと待って」
そう言って奥に消えてしまいました。

( *´艸`)あ、三味線あるって。←心の声

私はその場に立ち尽くしたまま、たくさん積み上げられている骨董やがらくたのような古物を見回しました。
店は一般的なコンビニの1.5倍ほどの広さでしょうか。
そこへ所狭しと古いものが積み上げられて、獣道のような細い通路が伸びている。
私の目にも、一見乱雑に見えてきちんと分類されて仕分けして積み上げられていることくらいはわかりました。

古美術商の店舗というより倉庫みたいな感じなの。
いや、古美術商の店舗としては広すぎるので店舗という名の倉庫なんだろうな。
私はここのオヤジが仕入れ専門の古物商のように思えたのね。
※誰も住まなくなった古い民家・名家が解体される際に、古道具をまとめて安く買い取って他の骨董商に売る専門の業者のこと

すると、すなわち、このオヤジの客は目の利く骨董商ということになる。
よってオヤジも目の利く商売人なのだろうと思われたワケです。

どんな三味線かなぁ~

入り口あたりで立って待っていたら、オヤジが目の前に来て「三味線ってどんなの?」と訊くので「津軽を探しています」と言ったら

「津軽!? この辺で津軽は出ねぇよ、宿場町・温泉街は座敷で演奏するから普通長唄でしょ。太棹を置いている家なんて、無いよ」と、素っ気なく言われてしまった。

「あ、ナルホド。」

無いって。

店主の説明には納得です。
そう、私の住んでいる地域は三味線の先生は全て長唄の先生である。
最近でこそ津軽三味線を教える先生もいるが、ほぼ県外の人で、このあたりの住人ではない。

「ま、今ウチに置いてるのは長唄用だけど1万で買っていけば?」と、オヤジは三味線が入っていると思われる段ボールを無造作に私の前に置くのね。

私:「いらない、津軽じゃないなら買わないです。」

店主:「長唄用だって練習用にはなるぜ、家で練習するなら三味線が必要だろ。教室で借りてても家では練習できなきゃ習う意味ねぇぜ、いいから買って行けよ」

私:「先生が三味線を持ち帰って練習していいって言てくださるから、お借りした三味線で練習してます。津軽じゃないなら不要です、忙しいところ呼び止めてすいませんでした。」

もちろんオヤジも私が買うなどと思っていない。
つまり私はこのオヤジに試されているだけである。

買いもしない三味線を「段ボールから出して中を見せて欲しい」などと言ってはいけないのである。

無いなら、もういいや

話を切り上げて帰ろうとすると、オヤジにたたみかけられてしまった。
「今までに一度も太棹は出てこなかったし、これからも絶対でてこねぇな。残念だけどウチには無い」

古物商が「絶対出てこない」といえば、客は「でも、もしかしたらでてくるかもしれないから、出てきたら教えて・どこかから仕入れてもらえませんか」などと食い下がってはいけない。

骨董屋の常識として、プロが無いと言えば無いのである。
オヤジは私を試してるだけなのね。

残念だけど帰りますね

「わかりました。ありがとうございました」とお礼を言って店を出ようとしたら、

「悪いこといわねぇ、アンタみたいな素人はヤフオクとかで探したほうが早いぜ。この辺で津軽はアンタじゃ探せねぇよ」とオヤジが話しかけてくるワケです。

もう、帰りたいんですが

(´;ω;`)
なかなか帰してくれないの

「私は素人すぎて目に自信が無いからヤフオクで探すのは無理です。」と正直に答えたら、オヤジはまたじぃ~っと私をみるのね。

アンティークの仕事をしていて、同じ目でこちらを見る人に会ったことがあるんですが、こういう目の利く人は、人を「見る」らしい。
相手にする価値が無いと思えば「帰んな」と店から追い出すだけである。
どんなに素人が取り繕っても中味が「見えて」しまうのだから私は観念するほかない。

あのぅ、帰りたいんです(´;ω;`)

「ま、長唄用じゃ音が違うしな」と小さく言って、オヤジは三味線の入った段ボールを奥に片づけ始めたのね。
私は、どうもオヤジの試験に合格したらしい。

その後は矢継ぎ早に質問し始めました。
どうも、私で暇をつぶそうと思ったらしい。

「三味線の皮って、何の皮か知ってる? 言っておくけど猫じゃねぇぜ」
「皮って、どの国から輸入してるか知ってる?」
「三味線の棹って、素材は何がいいか知ってる?」
「俺んところの三味線を入れるケースは100万はくだらねぇよ、よく見て行けよ」
「この棚は黒檀なんだぜ」
「アンタ、三味線って本気でやろうと思えばどのくらいカネかかるかわかってんの? 悪いことは言わねぇから真面目に働けって、主婦が習うもんじゃないって」

話が長いわよね(´;ω;`)

ワタシ、帰りたいんです

結局、1時間、オヤジは話し続けました。
私としては、津軽三味線が無いということだけはわかりました。

三味線買うなら楽器屋でどうぞ。

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